成人男性に見られる典型的な「男性型脱毛症」
現在、日本人の男性で薄毛を認識している人は、およそ2465万人と言われています。男性型脱毛症には、主に遺伝と男性ホルモンが関係しています。多くの場合20代から脱毛が始まり、30~40代で前頭部と頭頂部が薄くなってくるタイプです。始まりの時期により、青年性、若年性、壮年性、老人性というように分類することもあります。
男性型脱毛症のメカニズム 男性ホルモン要因
男性ホルモンのテストストロンが毛乳頭細胞内に入ると、5α-リダクターゼにより、より活性の強い5α-DHTに変換され、男性ホルモンレセプターと結合し、遺伝子に取り込まれて、薄毛、細毛を引き起こすようになっていきます。しかし、男性ホルモンレセプターは、後頭部や側頭下部の毛乳頭細胞にはわずかしかないため、前頭部や頭頂部がハゲても、頭部や側頭部の毛髪は残ることになります。男性ホルモンの影響によりヒゲが濃くなり、前頭部や頭頂部の髪は薄くなっていきますが、なぜ同じ男性ホルモンが一方では発育を促し、もう一方では退縮させるのでしょうか。ヒゲの毛乳頭細胞では、インスリン様成長因子(IGF-I)が分泌され、ヒゲの成長が促進されます。一方、前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞では、角化細胞の増殖を抑制する、形質転換成長因子(TGF-β1)が作られ、毛乳頭が委縮し、毛母細胞の成長が抑制され、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を起こすようになります。そのため、ヘアサイクルの成長期が短縮し、細くて短い毛に生え変わりながら、ウブ毛へと逆転換してハゲていきます。
男性型脱毛症のメカニズム 遺伝要因
男性型脱毛症の原因遺伝子は、母親からのX染色体にある男性ホルモンの受容体遺伝子(AR)により受け継がれることから、父親や父方の祖父がハゲているよりも、母方の祖父がハゲているほうが危ないとされていました。ところが、2008年に、男性ホルモンとは無関係と思われるDNA塩基配列の変異が、20番染色体で見つかりました。ARとこのDNA変異が両方ある場合、男性型脱毛症の発症確率が7倍になるという研究発表がされています。