加齢により毛包のミニチュア化が進行
加齢により毛包のミニチュア化が進むことが分かってきました。40歳の方の毛包に比べ、59歳の方の毛包は小型化していて、再生してくる毛包自体も小くなり、これによって毛もだんだん細くなり、本数も減ってくることが分かってきました。
17型コラーゲン
長い間ベールに包まれていた白髪のメカニズムが、ようやく明らかになってきました。毛包の中に色素幹細胞が発見されたのをきっかけに、「17型コラーゲン」というタンパク質が白髪や脱毛のカギを握っていることがわかってきました。
毛の根本を支える毛包にある色素細胞がメラニン色素を作り、髪を生やす細胞を作り出す細胞に供給しています。加齢により色素細胞が作れなくなると、メラニンを供給できなくなり髪が白くなるのです。この色素細胞のもとになる細胞は「色素幹細胞」と呼ばれています。この色素幹細胞が発見されたのは2002年です。毛包の中ほどの「バルジ領域」と呼ばれる場所に、この色素幹細胞の居場所(ニッチ)があります。毛髪の成長期に色素幹細胞で生まれた色素細胞は、毛包の中ほどから根本の毛母のほうへ運ばれます。その運ばれた色素細胞によって黒髪になります。毛髪の成長が止まる退行期や、次の髪が伸びる準備をする休止期には、色素細胞も休んでいます。
17型コラーゲンの働き
毛包のバルジ領域には毛包幹細胞と色素幹細胞があり、それぞれが互いの相互作用により維持されています。その維持に重要な役割を果たしているのが17型コラーゲンです。17型コラーゲンは、ヘミデスモソーム(細胞接着分子)を構成する膜貫通型コラーゲンと呼ばれ、毛包幹細胞を本来いるべき場所に(ニッチ)につなぎとめておくために「いかり」のような形をしています。毛包幹細胞が作るTGF-βというタンパク質が働いて、色素幹細胞を未熟な状態で眠らせていることで枯渇しないようになっています。17型コラーゲンが失われると、毛包幹細胞をつなぎとめておけなくなり、未熟な状態でバルジ領域から離れてしまいます。そうなると、幹細胞として機能せずに成熟した細胞になって、表皮の垢となって毛穴から出て行ってしまいます。毛包幹細胞は毛髪を作り出す角化細胞の供給源なので、それが失われるとしっかりした毛が生えなくなります。さらに、色素幹細胞も維持できなくなるので、色素細胞が供給されず、白髪になります。
17型コラーゲンはなぜ失われるか
加齢により幹細胞内のDNAが損傷される際に引き起こされるストレスに対して細胞が反応するためと考えられています。ストレス反応として、「好中球エラスターゼ」という酵素が毛包幹細胞の中で間違って作られてしまい、17型コラーゲンが分解され、どんどん消失していき、幹細胞は成熟し、毛を作る細胞にならずに毛包からフケや垢として表皮に排出されてしまいます。
17型コラーゲンは、薬・サプリメントで補えるか
体の内部のコラーゲンは、他のコラーゲンのように注入することはできません。17型コラーゲンを減らさない/増やすことについては、現在研究がつづけられています。